【上海に奇跡を起こした男の物語】〜情けは人のためならず・父の想い出①

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まさにテレビドラマのような展開だ。

 

頭の固い日本本社経営陣は、父のやり方に難色を示し、

中国人労働者を優遇する父を、中国側も目の上のたんこぶとして見始めた。 


父は、黒字になったのだから、それに見合う給料を全員に支払うべきだとし、

従業員全員の給料を上げ、労働者保険を与え、

前述の通り、人材向上のため、図書館を設置し、村人にもこれを開放し、

従業員が社長と同じものを食べられるような食堂を作った。


労働者を搾取していた中国側は、そんなことをされては、他の工場との差がでて困る、とし、

日本の経営陣も父の経営方針は論外だとし、日中双方で


「鈴木は会社を乗っ取ろうとしている」


との怪文書が飛び交い、父を解雇することを決定したのだ。




そのとき、一番悲しんだのは、従業員たちだった。



社員
社長、これは私たちの氣持ちです。



それは、その当時、最高級のローレックスの腕時計だった。

事務で働いていた社員が、少しずつお金を出しあい、父に贈ったのだった。


会社がやったのではなく、従業員たちが自らそうしてくれたのだ。


そして、交通事故にあったチーちゃんからは、

父の新しい人生の船出が「順風満帆」であるようにと、帆船の模型が贈られた。






そして、別れの日。


従業員全員が工場の前に整列し、その家族、村人までもが、父を見送ってくれた。




その後、その会社がどういう運命をたどったか…



多分、想像がつくのではないだろうか。



父が辞めて、たった1年半で倒産したのだった。




人々の信頼というものが、いかに大きな力となりうるか。



大切にされたという感謝が、どんなに人を向上させるのか。





利益だけを追求する当時の会社経営陣の方々には見えなかったのでしょう。


現在でも、 多くの日本企業が海外で安い労働力を使っていると思います。 


100円ショップのようなものがどのようになりたっているのかよくわかりませんが、

そういうものが成り立つような労働環境にいる人々がいる、ということなのではないでしょうか…


海外の安い労働力を利用している企業が、自分たちの利益だけでなく、

地域の環境、現地で働く人々にも配慮した経営をなさってくださることを祈ります。 



本当に豊かな社会とはどういうものなのか…



経済発展という幻想の向こうに、答えがあるような気がしてなりません。



「情けは人のためならず」



奇跡 は 人が人としての 

心の豊かさを取り戻した時に起きる。




それは、時代や国を超え、


人として私たちが忘れてはならない


心の在り方なのではないでしょうか。










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