【第11話】『生きた証を残して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
新しく出来たであろう、空へ続いているかのような上り坂を進む。
美しい景色は、心身共に力を与えてくれた。
それと同時に、僕の死に場所候補になった。
この旅で一番のお気に入りの写真だ。
本気で遺影にして欲しいと思っていた。
サングラスかけてるから却下されると思うけど…
僕が写真を撮るのは、この旅を忘れないためという理由と、
もしも死を選んだ時に、僕が見た景色を、僕が歩いた道のりを、
僕が生きていた証を、大切な人たちに見て欲しいと思っていたからだ。
僕が旅の途中で死んだら、家族は警察からの電話で僕の死を知ることになる。
何の理由も知らぬまま、僕の死を受け入れることになる。
「なんで?」
と理由が分からないのが、一番納得出来ないことだ。
だから、僕が何を見て、何を考え、その選択をしたのかが分かれば、
少しはその結果を受け入れやすくなると考えた。
写真が遺書の代わりだった。
写真を撮りながら思った。
僕は景色を撮っているんじゃない。
その時の感情を撮っているんだ。
写真家ってこういうことなんだなと思った。
誰かが生きた証を、自分が生きた証を残す。
その真実を写すのが、写真なんだ。
僕は、ポイントになる場所、美しい場所、
感情に変化が現れた場所の写真を撮り続けた。
子ども達よ…
しばらくすると、韮崎市に入った。
韮崎。
ラジオで聞いたことある。
景色は徐々に住宅地に変わっていった。
とある幼稚園の前を通り過ぎた。
20人ほどの園児たちが僕を見て、何やら賑やかになっていた。
「変な人がいるー!」
「山から来たのかなー?」
「山に行くんでしょ?」
「変な人ー!」
「ねぇ変な人ー!」
思ったままを口にする。
何て素直な子供たちだろう。
しかし、子ども達よ。
素直過ぎるのは、時として人を傷付けることもあるんだぞ。
覚えておくといい!
僕は素直な子ども達をフルシカトして幼稚園を通り過ぎた。
韮崎警察署を通り過ぎ、韮崎市役所で少し休憩させてもらうことにした。
冷水機最高!
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