【第11話】『生きた証を残して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
バス停のイスに腰を掛けながら、思った。
僕は、十分休んだ。
休憩は終わりだ。
準備が出来たなら、前へ進もう。
一歩進めば、一歩ゴールに近付くんだから。
僕は、うつ病に甘えていた節がある。
うつ病の肩書きがあれば、無条件に会社を休める。
働いていなくても、
「うつ病なんだから仕方ない」
という理由をつけることが出来た。
家でほぼ寝たきりだった時は、本当に働くことが出来なかったが、
今はもう、毎日20km以上歩くことが出来ている。
人と話すことだって、人に道を聞くことだって出来ている。
僕はもう、十分休んだ。
あとは、前に進む勇気と自信を持つことだ。
せっかくもらった自由なこの時間。
これからの人生のために、
自分の人生のために、
自分自身のために、
価値のある時間にしよう。
新しい自分になる力に変えよう。
そう決めて、バス停を出発した。
何か答えが分かった気がした。
僕はこの旅で変わる。
一分一秒、すべてを力に変える。
そのために出来ること…。
ただ前へ進む。
一歩ずつでいい。
ほんの少しでもいい。
前へ進み続ける。
それだけで僕は変われる。
世界は変わるんだ。
終わらない4日目…
前へ進む。
前へ進み続ける。
すると、道路標識が現れた。
松本まで82km。
松本と言ったら、長野県だ。
僕は確実に前へ進んでいる。
確実に日本海へ近付いている。
嬉しかった。
地図でしか見たことのない地名に、
自分の足で辿り着こうとしていることに、感動した。
しかし、足の痛みが次第に強くなってくる。
「ピキッ」
また右足に激痛が走った。
こうなってしまったら、もう長くは歩けない。
しかし、この周辺に宿は無い。
段々と暗くもなってきた。
「今日は野宿だ。」
著者の坂内 秀洋さんに人生相談を申込む
著者の坂内 秀洋さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます