【第11話】『生きた証を残して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
そう決めた。
人生で、初めての野宿。
危険なのか?
凍死するのか?
おまわりさんに捕まるのか?
不安はいっぱいだが、何事も経験。
やってみなくちゃ、答えは見つからない。
人生で一度くらい、野宿した経験があってもいいじゃないか!
野宿をする場所は、「道の駅はくしゅう」
日本の名水に選ばれている地らしい。
水があれば、何とか生き延びられる。
僕は白州に向かって歩いた。
やはり夜は冷える。
「ピキッ」
右足の次は、左足に激痛が走った。
もう信じられないくらい痛い。
拷問を受けているかのような痛みが、
歩いていても、止まっていても、常にまとわりつく。
靴一足分くらいの小さな歩幅で、なるべく足に衝撃を与えないようにして歩く。
普段ならなんてことのない、歩道の段差を上がることさえも一苦労だった。
やっと白州の標識が出てきた。
あと2km…。
たった2kmだが、今の僕には遥か遠くに感じるような距離だった。
あと1km…。
足の痛みはもう限界。
ここまでの1kmを20分以上かけて歩いた。
24時間TVで100kmマラソンがある。
最後のゴール付近のランナーを想像してみて欲しい。
今の僕はあんな感じだ。
24時間TVは感動を誘っているようで嫌いだったが、
そんだけ走ったら、感動して欲しいと思うくらいしんどいと思う。
ありゃ尋常じゃない。
何か強い意志が無いと絶対に成し遂げられない偉業だと思う。
あれはプロの偉業だよ。
死ぬほど痛いって、なかなか経験がないと思うが、本当に死ぬほど痛い。
しかし、あと少し先にゴールがあると思うと、
その痛みを我慢してでも、
「何としてでも辿り着きたい」という気持ちが湧いてくるのだから、
人間は不思議だ。
またさらに30分くらい時間をかけて、やっとの思いで道の駅はくしゅうに辿り着いた。
「やっと着いたー!」
時刻は18:55。
着いた途端に、今までの辛い気持ちが一気に吹っ飛ぶ。
きっとこの感情を達成感と言うのだろう。
著者の坂内 秀洋さんに人生相談を申込む
著者の坂内 秀洋さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます