【第13話】『神様がくれたもの』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「すみません。今日は満室です。」
ガビーン…。
なんと、連休でもないのに満室になるものなのか…。
僕の頭に野宿という文字が過る。
ヤバいな…。
また宿を探し、電話をかけた。
「もしもし」
「今日泊まりたいんですけど、部屋空いてますか?」
「素泊まりでいいんですけど。」
「ちょっと待ってね。」
感じのいいおばちゃんだった。
「一部屋だけ空いてるよ!」
空いていた!!
「よかったー!満室だったらどうしようかと思いました。」
思わずそう言ってしまった。
「あとどのくらいで着きますか?」
おばちゃんがそう聞く。
「えっと、茅野から歩いて来たんですけど、ここどこですかね?」
「とをしや薬局塩尻中学校前店っていうところなんですけど…」
「ナビだとあと3kmってなってるんですけど。」
するとおばちゃんは、
「まぁー歩いて来たの?」
「塩中だったら、あと少しだよ!」
「道分かる?」
優しい。
「ナビがあるんで、大丈夫だと思います!」
「3キロだとちょっと時間かかっちゃうかもしれないんですけど…」
「分かったよ!待ってるから気を付けて来てくださいね。」
なんとも良いおばちゃんだ!
そして、今夜の宿を確保!
あまりの足の痛さに、明日からに備えて、
その薬局で少し高めの足のサポーターを両足分買い、宿に向かった。
約3kmの道のりを、とんでもなくゆっくりとしたスピードで歩いていく。
やがて国道20号線は、塩尻から19号線に変わる。
「道はこうして変わっていくのか!」
初めての経験だった。
初めての経験は、恐怖心が付きまとうが、それは確実に知識になる。
自分の肌で感じることほど、感動出来ることはないし、納得出来ることもない。
僕はこの旅で、いつくもの初めての経験をしてきた。
自分の肌で感じ、体験した。
知らないことはまだまたたくさんある。
でもこの旅で、既に僕は大きく変わっていた。
「もっと知りたい!」
世界は広い。
一歩外に出れば、そこは知らない世界だ。
僕は、その世界をもっと見てみたくなっていた。
自分の目で見て、自分の肌で感じたいと思った。
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