【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

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でも、前に進まなきゃ。


意識が朦朧としつつも、痛みを堪えながら、

ゆっくりゆっくり、それはもうゆっくりに、

ほんの少しずつ、それでも確実に一歩ずつ前へ進んだ。


すると…


一台の車が僕の横にピタリとついて来た。


あのおばちゃんだった!


窓を開け、


「あと少しだから!」

「頑張って!」


そう僕を励ましながら、ゆっくりと車を走らせ、


「そこ左入ったらすぐだから!」

「よく頑張ったね!」


そう言ってくれた。


そして、左に曲がると、


おばちゃんは車を僕の前に走らせ、ゆっくりと先導してくれた。


そして、車を停め、


「こっちに近道の階段があったはず!」


僕を少しでも早く休ませようと、車を降り、道案内をしてくれた。


こんなことってあるだろうか!?


一度ならともかく、二度、

そして、三度、

僕のために車を走らせ、戻って来てくれた。

そして、今、僕の隣で一緒に歩き、道案内をしてくれている。



神様は本当にいたよ。


神様みたいな人だった。


いや、この姫川に伝わる女神様なのかもしれない。


そんなおばちゃんだった。



そしてついに、僕はひすいの湯に辿り着いた!



なんと感謝をしていいのか分からない。


ただ、「ありがとうございます!」


これしか言えなかった。


おばちゃんと少し話した。


「自分に試練を与えたんです。」


「本当にもうダメかと思いました。」


うつ病になって、弱い自分を変えたくて、旅に出たことを話した。


「良い試練になったね!」


おばちゃんはそう言ってくれた。


今でも思い出すと涙が出てくる。


この言葉で、僕がどれだけ救われたことか。


旅に出て良かったと思った。


限界に挑戦して良かったと思った。


僕はなぜ、こんなに良くしてくれたのかを聞いた。


「いつもはヒッチハイクの人とかも乗せないのよ。」

「最初に見た時、スラッとしてるから女の子に見えてね。笑」

「私にも29才の息子がいて、自分の子どもみたいで…」

「どうしても気になっちゃってね。笑」


そう話してくれた。


本当に信じられないことが起きた。


奇跡としか言いようのない出来事だ。


あの場所で、あのタイミングで、

このおばちゃんで、そして、今の僕でなければ起きなかったことだ。


本当に感激した。


心から感謝した。


「本当にありがとうございます!」

「ご縁があったらまたお会いしましょう!」


そう言って握手をし、写真を撮ってお別れをした。



僕はこの旅で、唯一後悔していることがある。


一期一会を大切にしていたのだが、

このおばちゃんの名前と連絡先だけは聞いておけば良かったと本当に思う。


どうしても、もう一度会ってこの時の感謝を伝えたい。


そこで、迷ったが、おばちゃんと撮った写真を載せようと思う。



ご存知の方がいたら、僕に連絡をして頂きたい。


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