【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

14 / 18 ページ

前話: 【第16話】『最後の挑戦へ』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
次話: 【最終話】『僕の宝物』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

「ひすいの湯まであと10kmだから!」

「22時までに着かないと入れないみたいだよ!」


わざわざひすいの湯まで戻り、聞いてきてくれたらしい。


「大丈夫?」

「歩ける?」


正直、本当にツラかった。


もう足を動かすのがやっとなくらいだった。


でも、


「大丈夫です!」

「本当にありがとうございます!」


そう答えた。


「あと10kmだから、頑張って!!」


おばちゃんはそう言って、僕の肩を叩いた。


「ありがとうございます!」

「頑張ります!」


こんなことってあるだろうか?


たまたま見掛けた人のために、20km以上も離れたところに戻り、

情報を聞いて、また声を掛けてくれる。


おばちゃんは、真っ暗な道の中を、

僕を探しながら車を走らせていたんだと思う。


きっと一度ではなく、来た道を行ったり来たり、

何度も何度も僕を探してくれたんだと思う。


心から感動した。


いや、感激した。


感謝の気持ちが止まらなかった。


「本当にありがとうございます!」


そう言って、僕はまたおばちゃんと別れた。


元気が出た!


しかし、あと10km…。


2時間は掛かる。


この状態では、2時間以上掛かる。


今の時刻は、19時半。


2時間で着いたとしても、21時半。


22時まではギリギリだ。


間に合わないかもしれない。


でも、間に合うかもしれない。


それは、やってみなきゃ分からない。


僕は歩くしかなかった。


足に出来たマメがとんでもないことになっているのが分かる。


足はもう限界。


まともに歩くことはもう出来ない。


本当にツラかった。


ツラくて、ツラくて、仕方がなかった。


でも、糸魚川市街はもう目の前。


日本海は、すぐそこにまで来ている。



僕の旅は終わる。


僕は、これまでのことを思い出した。


今までの旅であったこと、


旅をしようと思ったこと、


仕事のこと、


彼女のこと、


家族のこと、


色んなことがフィードバックした。


真っ暗な道を独り歩きながら、


イヤホンから流れる音楽が、僕の心を大きく揺さぶった。





歩き慣れてない夜道を

ふらりと歩きたくなって


蛍光灯に照らされたら

ここだけ無理してるみたいだ


大人だから一度くらい

煙草を吸ってみたくなって

月明かりに照らされたら

悪いことしてるみたいだ


著者の坂内 秀洋さんに人生相談を申込む

著者の坂内 秀洋さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。