【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
僕は怖くなった。
恐怖で足の震えが止まらなかった。
こんなに怖い思いをしたのは初めてだ。
歩道も無い。
前に進むことが怖くて仕方が無かった。
それでも前に進まなければ、この洞門地獄は抜けられない。
だから、車の通らないタイミングで、猛ダッシュした。
そして、車のライトが見えたら、柱の間に隠れる。
車が来ないのを確認し、またダッシュする。
そしてまた柱の間に隠れる。
一番危ないのは、カーブだ。
カーブでは、先が見えない。
それは、向こうからやってくるドライバーも同じ。
五感を研ぎ澄まし、今だ!というタイミングで走り抜ける。
それをひたすら繰り返した。
でも、いくら進んでも、洞門地獄は終わらなかった…。
生きた心地がしないとはこういうことだ。
笹子トンネルが可愛いと思ってしまうくらい、極限状態に追い込まれる道だった。
目の前にある死、
いつまで続くか分からない恐怖、
休むことも許されない。
足の痛みも半端じゃなかった。
誰にも助けを求めることは出来ない。
孤独との闘い。
ここから逃げだしたかった。
でも、逃げることさえも出来ない。
怖かった。
怖くて仕方がなかった。
もうダメだ…
耐えられない…
死ぬ…
本当に死ぬ…
この場所で僕は死んでしまう…
そう思った。
そして、柱の間に隠れ、タバコに火を付けた。
もう無理だ…
きっと僕はここで死ぬ…
最期の晩餐ならぬ、最期の一服だった。
クソッ!!
ダセえな…。
こんなとこで死ぬなんて…。
僕は、ここで死んだ後のことを考えた。
もう誰にも会えないのか…。
親にも、姉ちゃんにも、友達にも、応援してくれた人達にも、誰にも会えないのか…。
僕が死んだら、みんなどう思うんだろう…?
きっと悲しむだろうな…。
あいつは?
こいつは?
僕がいなくてもやっていけるだろうか…?
きっと「あいつはバカだよ!」って言われるんだろうな…。
そこまで親しくない人達には、こんなことを思われるんだろうな。
「あいつ婚約破棄でうつ病になって、
日本海まで行くって、途中で車に轢かれて死んだんだって。」
「自殺だったんじゃない?」
「女にフラれたくらいで自殺かよ!」
残された僕の大切な人達は、周りからこんなことを言われるんだろうな…。
そんなことを思った。
本当、ダサいわ。
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