【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

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だがついに、僕はこの洞門地獄を抜けた。


歩き抜いた。


久しぶりに出た外の世界に、思わずガッツポーズをした。


助かった…。


と思った。




しかし、代償は大きかった。


足が完全に壊れた。


そして何より、極度の恐怖を長時間味わったせいで、放心状態だった。


外へ出た後も、幾つか洞門を越えた。


結局、越えた洞門は36個?


正確には分からないが、それくらい。


総距離にして約8kmくらい。


17時に入り、出たのは18時24分。


1時間半もの間、洞門の中に閉じ込められ、命の危険に晒された。


まさに地獄だった…。


こんなに頑張った僕を、誰か褒めてくれ!


と思う。笑



後日、


「すげぇトンネルばっかりでめちゃくちゃ危なかったんだよ!」


と親に話したところ、


「そんなん地図見れば分かるじゃん!」

「本当バカだねー!笑」


と言われた。


生きて帰っても、バカはバカだったみたいだ。笑


今まで、この洞門を歩いた人とは出逢ったことが無いし、

洞門の存在を知っている人もほとんどいなかった。


だから、この恐怖を話しても、誰も褒めてくれなかった。

誰もこのスゴさを分かってくれなかった。


もしも、これを読んだ人の中に、

この道を通ったことのある人がいたら、

真っ暗の中、あそこを独りで歩いたことを褒めて欲しいと願う。

切実に。笑


ただし、通ったことが無いからって、

興味本位で通ろうとしては絶対にいけない。


命の保証は出来ません。


それくらい危ないから、マネしないで欲しい。


恐らくマネする人はいないと思うけど…笑



そんなことはさておき…



僕はやっと地獄から抜け出した。


しかし、相変わらず外は灯りひとつ無い真っ暗な道だった。


そこは、草木に囲まれた道で、歩道は無い。


糸魚川ICも近く、大型トラックやバスもバンバン走っている。


この道こそ、人が歩いているとは到底思えないような道だった。


危ない!と思ったら草木の生い茂るところに飛び込む勢いで、僕は更に歩き続けた。





そして、やっと現れた標識。


糸魚川市街地はまだ先。


しかし、この先に必ずある。


絶対に辿り着いてやる。


僕は写真を撮った。


すると…


また一台の車が僕の横に泊まった。


「また乗ってけって言われるんだろうな…」


と思い、申し訳ない気持ちになった。


車から人が出て来た。


その人は、信じられないことに、

洞門地獄に入る前に声を掛けてくれたあの親切なおばちゃんだった。


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