【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
それに加え、腰の辺りに、
ライトを反射させる丸っこい反射板が出っ張って、一定間隔で続いている。
それをいちいち避けて歩かなければならない。
めちゃくちゃ邪魔だった。
その反射板を通る旅に、歩くスペースから体がはみ出る。
そして、そのスペースも途中で途切れる。
車道のみの真っ暗な道になる。
それでも、距離は短い。
大したことはない。
一瞬で終わることだ。
そして、◯◯洞門が終わる。
………。
また距離が増えた…。
洞門は終わらなかった…。
◯◯洞門◯◯m
◯◯洞門◯◯m
◯◯洞門◯◯m
洞門を越えても越えても、また更に洞門が続いた。
進んでも進んでも、残りの距離が減っては増え、減っては増えた。
数十mのものもあれば、数百mのものも、終わりはなく、全て連なって続いていた。
えー…。まぢかよ…。
思わずそう呟いた。
この道は、糸魚川から白馬に抜ける唯一の道。
交通量が多い。
しかも、大型トラックがバンバン通っていく。
洞門は灯りが無い。
あるのは、すぐ横を猛スピードで通り過ぎていく車のライトとヘッドライトの小さな灯りのみ。
既に歩道も無くなった。
ドライバーは、こんな道に人が歩いているなんて全く思っていない。
後から分かったことだが、僕が歩道だと思っていたスペースは、
歩道ではなく、点検作業をするときに、歩くためのスペースらしい。
もちろん、点検するときは明るい内だ。
こんなとこ地元の人でも通らない。
おばちゃんの言っていた通り、危険な道だった。
しかも最上級に。
昼間でも危険なんだから、
夜なんて完全に自殺行為だ。
僕は、甘かった。
地図では、トンネルがあることが分からなかった。
分かったのかもしれないが、気が付かなかった。
こんな道を歩くとは、一切予想していなかった。
こんな道があるなんて、想像も出来なかった。
ただ、ヘッドライトと、気まぐれに点く肩にぶら下げた手持ちライトが点いたのは、不幸中の幸いだった。
直しておいて本当に良かったと思う。
準備は大切だ。
いつ何が起きるか分からない。
それに直面した時では、もう既に遅い。
後回しは命取りだ。
そもそも、どんな道なのかを事前調べていなかったことが悪いのだが、
そんなことを今更言っても意味が無い。
僕は猛スピードで迫ってくる車に殺されないように、それはもう必死だった。
すれ違う車とは、本当にスレスレだった。
車が通る旅に風に煽られる。
一歩はみ出せば命取りになる。
真っ暗闇の中、車の轟音と、外を流れる姫川の激しい音がが響き渡る。
遠くから迫ってくる車の音は、
得体の知れない化け物が襲ってくるかのような
うめき声に似た音が徐々に大きくなりながら近づいてくる。
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