【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「ありがとうございます!」
そうお断りした。
するとおばちゃんは、
「そしたら、あと20数km先に、
ひすいの湯って言う仮眠できる温泉があるから、そこに行くといいよ!」
そう教えてくれた。
何とも親切なおばちゃんだろう。
せっかくの好意をお断りするのは、心から申し訳なかったが、ここで止めてはいけない。
僕は、自ら与えた限界に挑戦するという試練を、今日、乗り越えなければならない。
「教えてくれてありがとうございます!」
「助かります!」
「ひすいの湯、行ってみますね!」
「本当にありがとうございます!」
そう言って、おばちゃんと別れた。
そこから僕は、ひすいの湯を目指すことにした。
あと20数km。
これから夜になる。
足が保ってくれるかどうかも分からない。
それでも、歩く。
痛くてもいい。
辛くてもいい。
歩けなくなってもいい。
それでも、やらなきゃならない。
今、やらなきゃならない。
僕は明日、日本海へ辿り着く。
僕の旅は明日で終わる。
最後に真剣に自分と向き合わなきゃ。
全力で、自分と闘わなきゃ。
この試練を乗り越えなきゃ。
僕は強くなるんだ。
そして、またトンネルに入った。
しかし、ここからが地獄の始まりだった…。
トンネルは薄暗いが、一応灯りが点いている。
暗い外を歩くよりも安全だ。
このトンネルから一気に古びた感じになり、
歩道とは言えない程のものだったが、一応歩くスペースもある。
大丈夫!
僕は大丈夫!
おまじないのように、そう自分に言い聞かせ続けた。
そして、やっとの思いで、このトンネルが終わると思った。
すると…
名前が変わっている…。
終わったはずの距離が増えている。
何か変だ…。
◯◯洞門◯◯m
トンネルが洞門に続いていた。
洞門とは、山を切り崩し造られたトンネルのようなもの。
だが、トンネルと違い、谷側が柵のようにして柱が立っており吹き抜けになっている。
今までのはこんな感じ↓
明るい内は、柱の間から外の景色が見え、光が入る。
しかし、外はもう夜だ。
灯りは一切無い。
簡単に言えば、真っ暗なトンネルだ。
しかし、これまでも洞門は通ってきた。
長くても150m程だったので、僕は大して気にも留めていなかった。
しかしこの洞門、歩道がほとんど無い。
高さ15㎝程の段差に、幅60㎝くらいだろうか。
人一人分ギリギリのスペースしか無かった。
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