【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
猿だ!
野生の猿が食べ物を求めて山を下りてきたらしい。
野生の猿とか、どんだけ田舎だよ…
と思ったが、
こんだけ田舎なのだ。
目の前に猿がいる。
めっちゃ恐い。
猿と目を合わせてはいけないと言うことを聞いたことがある。
でも、今にも襲って来そうな猿を気にせず通り過ぎることは不可能だ。
同じ動物同士、テレパシーを送れば分かってくれると念じてみたが、
この猿たちには僕のテレパシーは伝わらなかった…。
間近で見ると、本当に恐い。
絶対怒ってるもん。
怒った顔してるもん。
ちょっと目を反らすと少し近付いてくる。
パッとそっちを見ると、止まる。
完全にだるまさんが転んだ状態。
このままでは、襲われると思ったから、僕は戦うことにした。
何せ、僕にはストックと言う武器を持っているのだから。
人間は卑怯だよね。
そうやってすぐに武器を使う。
素手じゃ大した力も無いくせに。
僕は直接猿に何かされた訳じゃないのに、
ストックを振り上げ、猿たちを威嚇しながら通り過ぎた。
本当に申し訳ないことをしたと思う。
ごめんよ。お猿さんたち。
初めての間近に野生の猿に対面したことで、
テンパり、心臓はバクバクになったが、正気を取り戻して、またトンネルに入った。
トンネルを出て、トンネル。
0.5km〜2.5km程のトンネルが続いた。
今日の天気は曇り、気温が低い。
歩いていると少し身体は温かくなるが、
15時を過ぎ、風も冷たく、また更に気温が下がってきた。
そんな時のトンネルは本当に助かる。
空気はあまり良くないが、温かい。
それにトンネル内には入り口から出口までの現在地の距離が表示してあり、
出口の見えないトンネルの中でも、
どんどん出口までの距離が近づいていくのが目に見えて分かって、安心した。
確実に前に進んでいるんだ!
という実感も湧いた。
トンネルを抜けると、そこは橋の上だった。
國界橋
僕はついに、新潟県に突入した。
糸魚川市内に入った。
テンションが上がった。
しかし、そのすぐ先で、一瞬にして冷静になる。
慰霊碑と書かれた大きな石がある。
自然と笑顔になっていた表情も、慰霊碑を見た途端に、真顔になった。
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