【第17話】『奇跡のおばちゃん』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
僕はまだ、自分の気持ちに納得が出来ていない。
だから、やり続ける。
歩き続ける。
トンネルが見えて来た。
親父が言っていた通り、比較的新しい。
中は綺麗だし、歩道もちゃんとある。
トンネル内は暖かく、風に煽られることもない。
灯りも付いている。
安全な道だ。
トンネルを抜け、またトンネル。
先に行けば行く程、トンネル内の歩道は狭くなっていったが、安全な道だった。
僕が抱えていた
トンネル=恐怖
の印象はぬぐい去られた。
ありがとう!おやじ!
3つ程トンネルを抜けると、視界が開けた。
トンネルは山の中をショートカット出来る道だ。
抜ければ、山を越えた別世界が待っている。
トンネルを抜けたところで交通整備をしていた。
車道に出て、横を通り過ぎようとすると、
「ちょっと待って下さい!」
交通整備の人が僕を止めた。
トランシーバーで何やら、コンタクトを取っている。
「こちらについて来てください!」
僕一人が通るために、わざわざ通行車を止め、道を空けてくれたのだ。
僕は先導され、整備区間を通り過ぎた。
何というVIP待遇だろう。
「ありがとうございます!」
すれ違う交通整備の人たちに声をかけた。
僕を先導してくれたのは、女性の人だった。
「日本海に出たいんですけど、新潟県はあとどれくらいですか?」
そう尋ねた。
「あの坂を上り切ったら、新潟県ですよ!」
気が付けば、新潟県はすぐそこだった。
無事に整備区間を通り過ぎ、
「道空けてくれて本当にありがとうございます!」
と伝えた。
するとその女性は、
「仕事なので。」
と答えた。
「お仕事頑張ってください!」
大きなお世話かもしれないが、そう言った。
女性は、ニコっと笑いながら、
「ありがとうございます。」
「お気を付けて!」
と返してくれた。
確かに、交通整備として当たり前の仕事なのかもしれないが、僕は嬉しかった。
例え仕事だとしても、誰かが自分のために行動してくれたことに感謝した。
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