パティスリーの味わいをカフェチェーンでも。プロントの本気が垣間見える、新スイーツ開発秘話
“パスタの店”といったイメージの定着により、カフェチェーンマーケットにおいてスイーツのイメージが弱かったプロント。そんな同ブランドはビジネスパーソンの男性からミレニアル世代の働く男女へとターゲットをシフトさせることで、今春より新たなブランドイメージの創出に注力しているそうです。チェーン店らしからぬ緻密なこだわりによって生まれた、新生プロントの“映えるスイーツ”開発秘話とは––––。商品開発部の村田彩さんに伺いました。
日本初上陸のケーキを筆頭に、映えるスイーツがお披露目。
──新作ケーキはパティスリーと比較しても遜色ありませんね。
そこは目指したところです。味や見た目はパティスリーに近いけれども、価格はお手頃といった点を軸に開発していました。例えば新商品の「生チョコオレンジモンブラン」は、普通のモンブランでは面白みがないので、これまでプロントで人気だった生チョコロールケーキをモンブラン型にしようというところからスタートしたんです。
リブランディング前からの人気商品である「ブリュレinバウム」は、ハイブリッドスイーツが流行った頃にバウムクーヘンとクレームブリュレを掛け合わせて開発したものですが、このように一般的に売れるケーキと素材を掛け合わせると、映える流行りのスイーツができあがるんです。
製造の基本はメーカーさんに依頼しているんですが、私が開発の際に心がけていることは、スケッチを細かく描くことです。思い描いていたものを製品として作っていただくためには正しく伝えることが大切なので「ここの色味はこう、ここには何を入れる」と、細かく指示を入れたスケッチやケーキ断面の設計図をメーカーさんにお渡しするようにしています。
──新しい取り組みなので、色々大変だったのではないでしょうか。
「抹茶バスクチーズケーキ」に関しては、サンフランシスコにあるカフェ”STONEMILL MATCHA”の商品を逆輸入したこともあり、開発はそこまで大変ではありませんでした。こだわりとしては、真っ黒に焦がすことでキャラメル風味を出すというのが本場スペインのバスクチーズケーキなので、そこは近づけたいなと。あと抹茶は退色が激しいので、ショーケースで保管しても色味が損なわれないように改良しました。元々日本人の方が開発したこともあり、抹茶の繊細な味とチーズの濃厚な味わいが楽しめます。日本初上陸というのが大きなポイントですね。
抹茶バスクチーズケーキ
「生チョコオレンジモンブラン」は“生チョコ”というのをどうしても謳いたかったのですが、濃厚なチョコクリームって絞るのが大変なんですよ。ギリギリ絞れるところまで濃度を調整するのが大変でした。
また一般的なモンブランの底にはメレンゲやスポンジが使われますが、冷凍ケーキなのでメレンゲだと解凍したときの食感がフニャっとなってしまうんです。そのため底にガレット生地を使うことで、ザクッと感を出すことに。生チョコ部分が甘いので、ガレットに塩を入れることで全体のバランスも取っています。
そして手に入りにくいなか、最後の最後まで諦めずに探したものが、オレンジスライスのトッピングです。最終的にはピンキーオレンジという品種をセレクトしましたが、これがあるとないとでは映え具合が大きく違うんですよ(笑)。映えはもちろんですが、どこを食べてもオレンジモンブランの味になるよう設計されています。
開発時の生チョコモンブランのイメージ
実際の生チョコモンブラン
「ベリージェリーレアチーズ」はレアチーズ部分の水分率が高いため、底の生地には風味を損なわないグラハムクッキーを使っています。レアチーズケーキってシンプルな食べ物なので、そこで味わいをつけたいなと。あとは普通のトッピングでは映えないので、フルーツを表面に持ってきて厚めのゼリーでコーティングすることで宝石箱のような見た目に仕立てたのですが、またこのフルーツの部分も一段と難しく……。
普通の冷凍フルーツは周りに水がコーティングされているので、解凍すると離水して色味が滲んじゃうんですよ。だから今回は生フルーツを一旦冷凍してそれを解凍する方法を取りました。しかもカットした際に、どこを切ってもブルーベリーが必ず1個入るように並べてもらったのですが、メーカーさんからは「すごい大変なんですけれど」と、困惑気味に言われましたね(笑)。
ベリージェリーレアチーズ
バターサンドが市場で流行り始めていることや、テイクアウト需要も今後は伸びるだろうと考えて「バターサンド ソルティレモン」は開発しました。これに関しては「厚みをどうするのか」というのが目下の課題。クリーム部分の厚みを1.5cm、3 cm、5cmと色々試した結果、食べやすさと映えが両立する3 cmを選択したのですが、それ以上に大変だったのが、クリームの真ん中からレモンピールを見せることで……。
クリームにレモンピールを混ぜ込んでしまうと外側から見えなくなってしまうので、映えないんですよね。だからメーカーさんに「ちょっとコストがあがってもいいから!」とお願いして、外から見える部分のレモンピールは手作業で入れてもらうことにしました。映えのためにも、ここは絶対でしたね。
バターサンド ソルティーレモンのイメージ
実際のバターサンド ソルティーレモン
──お話を聞けば聞くほど、どの商品もチェーン店とは思えない手の込みようですね
そうですね。今回かなり細かいこだわりを入れたので、メーカーさんからは「チェーン店でやることじゃない」と言われたことも(笑)。これまでは陳列も茶色のグラシン紙を敷いた色気のないものでしたが、今回からはアルミカップで高さを出したりゴールドのケースに入れたりと、商品によって見せ方を変えています。形状もベーシックな三角ケーキが多かったので、四角や丸といった感じでバラエティ豊かにするなど、陳列の時点で映えを意識していますね。
陳列方法にも細かいこだわりが
パティシエとしての知識と経験を詰め込んだ結果、SNSのお客様投稿は20倍に⁉︎
──お客さまからの新商品の反応はどうですか。
店舗には立っていないため直接のお声は聞いていないのですが、私たちにとっての現在の生の声は SNS です。これまではターゲット層が上の世代だったことに加え、ミルクレープやモンブランといった一般的なスイーツだったので、新作のケーキを出してもほとんどSNSにアップされることはなく……。現在はリブランディング後のターゲット層である20〜30代の方々の投稿が非常に多く、肌感として20倍くらいは増えたと聞いているので嬉しい限りです。
仕事としても、従来の新商品開発は定番商品に季節感を加えるといった感じだったので、正直パティシエとしての面白味は……(笑)。ただ今回はミレニアル世代に向けたリブランディングで、今までとは全く違う新しいタイプのケーキを開発しようということで、これまでの知識を総動員して構想を練りました。予算もアップして色々できることが増えたため、単純に楽しかったですね。
──村田さんの腕が鳴りますね。今後のラインアップはどのようなものを考えていますか。
今後はお客さまの反応を見ながら、シーズナル商品として新しい味も登場させたいと考えています。次季の構想としてあるのは、人気のバターサンドをマロン系の味に変えたり、ベリージェリーレアチーズは全く形状を変えてりんごを使うといった、秋向けのラインアップですね。
“映え”を意識した目にも楽しい仕上がりはもちろんですが、食べて美味しくなければリピートに繋がらないので、開発の際は味にもこだわり続けていきたいですね。お客さまの生の声が拾えるSNSはモチベーションにも繋がるため、引き続き投稿していただけると嬉しいです。
<まとめ>
スイーツの都パリにて腕を磨いた村田さんが仕掛けるプロントの新作ケーキは、カフェドリンクの定番であるコーヒー・紅茶のどちらとも合うよう綿密に計算。パティスリーの持つ満足度と、チェーン店の強みであるコストパフォーマンスを掛け合わせた一皿は、プロントブランドのイメージを一新するに十分なインパクトを兼ね備えています。
株式会社プロントコーポレーション 事業推進本部 商品開発部 村田 彩
東京都出身。ル・コルドン・ブルーのパリ校卒業。2014年プロントコーポレーション入社し、ブリオッシュ・ドーレの商品開発を担当。2019年6月よりプロントのカフェタイムに販売するケーキの商品開発を担当し、現在はプロントの他、同社系列の和カフェTsumugi(ツムギ)などの商品開発も担当している。
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