式場選びのパーソナルサポート「トキハナ」、シリーズAの資金調達に至るまでの戦略の挫折と、コロナ禍でのPMFで得られた「自信」
株式会社リクシィは2016年創業。代表の安藤正樹は学生時代にドリコムの創業メンバーとしてマザーズ上場を経験した後に、7年間ブライダル企業の役員に。在籍期間中、業界内でtop成長率の実績を残しマザーズ上場・東証一部上場といった実績を残したものの結婚式場の勝ちパターンが媒体への大量の広告投下と営業効率で決まってしまう構造が結婚式実施率の上昇を阻害していると確信し、この課題を解決できるのは自分しかいないという使命感で起業に至ります。
弊社の主力事業「トキハナ」は、正にその想いを象徴するプロダクト。コロナ禍に生まれたこのプロダクトは、度重なる緊急事態宣言を乗り越え、21年9月→23年1月で1136%成長し、2023年7月にはシリーズAの資金調達を発表しましたが、様々な挫折の上で成り立ってきました。
「トキハナ」が誕生したのは2020年5月、創業した2016年5月から4年の月日が経っており、様々な紆余曲折がありました。このストーリーでは、そんなエピソードとそこで得られたものについて紹介させていただきます。
2つのサービスで面をとりにいく戦略の失敗
結婚式の実施を増やすためには、「大量の広告出稿&強い営業ができる式場が組数を増やすのではなく、高いクオリティで顧客満足の高い式場が自然と組数が増える世界に」する必要がある───。
そう考え、リクシィは創業当初からの構想として、「gensen wedding」と「Choole(チュール)」という2つのサービスでマーケットの面を抑えるという方針を立てました。
gensen wedding → 店舗・人・プランニングサービス・透明・高単価
Choole → 無店舗・オンライン・組み合わせサービス・自由・低~中単価
2つに分けたのはターゲットが異なると考えていたこと、お互いの弱みも克服しあえると考えたことが理由でした。果たして、予定通り2つのサービスを展開したわけですが、それが失敗でもありトキハナの誕生にも至るのです。
■結婚式の不透明を透明にする「gensen wedding」
創業時に始めたのが、「gensen wedding」。結婚式当日までのプロセスが、「結婚式場を決定した後に内容が決まる」という順番であるがゆえ、式場決定後に「この式場だとやりたいことができないと気付いた」「思ったよりも値段がかかることがわかった」といった不満の声が絶えません。この課題を、順番を変えることで解決しようとしました。
「gensen wedding」では、結婚式場を決める前に、対面で元ウェディングプランナーがどんな結婚式が良いのかをプランニングして、その内容にあった結婚式場を選んでいただきます。結果、費用も明確でミスマッチも少なくなる。業界内でも意義のある取り組みと好評いただけました。
コア層のカップルの支持を得ることができ、2期目での黒字化に寄与しました。拡大には拠点を全国に広げる必要があり、東京は銀座に、神奈川では横浜に店舗を開設し、ゆくゆくは大阪や愛知にも展開するというビジョンをもっていました。また、店舗でのサービスをオンラインで疑似体験をしてもらえればとLINE上で診断サービスも開始しました。
ただ、足し算の事業モデルは、成長速度の限界があります。そこでもう1つのサービス「Choole」です。非店舗型の事業モデルで、異なる顧客層にリーチできると考えて2018年にローンチしました。
■結婚式の不自由を自由にする「Choole」
結婚式は、式場中心であらゆるサービスが提供される利便性と引き替えに、消費者の選択肢が失われるという業界構造があります。結果、「好きなドレスが着られなかった」「高いオプションしかなくてしぶしぶ選ばざるを得なかった」「契約前に見ることができなかった」などの声が上がります。この課題を解決したいと考えて生まれたサービスが「Choole」でした。
「Choole」では、持ち込み無料の許可をとれている結婚式場だけを紹介することで、消費者が自分の好きなモノを選んで結婚式を挙げることができ、ドレスショップやフォトグラファーなどのクリエーターと直接取引できるので値段も下げられるというサービスでした。
B Dash CampのPitch Arenaではfinalに進み、業界内では今での業界構造を大きく変えるかもしれないと注目いただきました。が、結果としては成功しませんでした。
賛同する結婚式場の参画は順調に集められたものの、消費者が増えませんでした。プロモーションに失敗しているのかと、マーケティングコンセプトを変え、topページを変え、広告クリエイティブを変えという繰り返しを何度も何度もした結果、コミュニケーションの問題ではなく、プロダクト自体の課題を認めざるを得ないという総括に至ります。
「Choole」のメリットを享受するには消費者に一定の知識と気合が必要でした。初めての結婚式で経験も無い中、見たこともないブランドのサービスを知識と気合も持ち合わせた状態で、他の一般的な方々と違う方法で一生に一度の失敗できない結婚式に利用いただくというのは、想像以上のハードルがありました。
つまりは、プロダクトが顧客起点になっていなかったのです。事業者主導のウェディング業界を消費者主導に変えていくと言いながら、消費者目線が不足していたのは自分でした。
不透明を透明に、不自由を自由に、非効率を効率的にする「トキハナ」の誕生
「Choole」抜きで「gensen wedding」のみでの成長を目指す選択肢はありません。足し算の収益モデルの限界があります。2つのサービスにリソースを分散するデメリットだけが残る状態。方針の見直しは必至となり、その結果、「トキハナ」が生まれました。
「トキハナ」の発想は、シンプルに「gensen wedding」と「Choole」を足し合わせるというものでした。
gensen wedding → 店舗・人・プランニングサービス・透明・高単価
Choole → 無店舗・オンライン・組み合わせサービス・自由・低~中単価
を、
トキハナ → 無店舗・オンライン・リアルな情報提供・透明&自由・低~高単価
としました。
これは、「サービスを顧客起点で考える」という反省からユーザーインタビューを積極的にやるようになり、異なる顧客層と想定していたこの2つのサービスが、実は同じ顧客層だという仮説をもっていたこともこの判断の根拠になっていました。
gensen weddingもChooleも、結婚式場を決める前に不安を解消したいという点で同じでした。消費者は何に不安なのか、どの不安を解消できれば結婚式場を決めていいのか、それすらわからない状況で、そこに明確な区別はなかったのです。
結婚情報誌とSNSとで書かれていることもまるで違います。SNSの普及で、わからないことが増えてしまった。それが消費者を取り巻く環境であり、我々が解決すべき課題であるとテーマ設定しました。
gensen weddingで展開していたLINE診断で、対面のクオリティまでは到達しなくても多くのお客様ニーズを満たせることを確認できていたことも大きく作用しました。
「花嫁の不安をトキハナツ」という意味を込め、「トキハナ」と命名し、このコンセプトに向けたリニューアルの最中にコロナがやってきました。
コロナ禍に果たしたPMF(プロダクト・マーケット・フィット)
リニューアルを2020年4月末に定めて走っていたところに、コロナがやってきました。結婚式場を探す人はいなくなり、何も動かせない状況での再スタートです。
会社は単月売り上げが90%ダウンするなど、経営危機に陥りましたが、結婚式場向けのコンサルや、結婚式業界から異業種への転職支援、LINEによる営業DXコンサルなどでキャッシュを生み、2021年度は黒字化。その間にトキハナのPMFを進めました。
無店舗/オンライン → 独自診断とLINEとZOOMのサポート体制
リアルな情報提供 → 参画する結婚式場の許可
透明&自由 → 参画する結婚式場の条件
低~高単価 → 見積もりの明確な案内と予算感に合わせた式場提案
といった特徴を用意し、ローンチ当初は、トキハナを利用されるお客様のLINEを毎日すべて見て、LINE上でお客様の不安やニーズをどうすれば解消できるかを考え、サービスに落とし込んでいきました。
幸いコロナで、ZOOMが浸透したことで参画式場は増え、外出を控えるという背景から式場選びをオンラインでするというニーズは高まりました。21年9月→23年1月で1137%成長させることができました。
トキハナを利用くださるお客様からはgoogleの口コミも★5のコメントを多数いただき、結婚式場からも「トキハナからの送客が最も多い」「送客が増えて助かっている」といった声を頂戴しています。
最近では、結婚決定前~結婚式場選び前のカップルのサポートもしようと、
結婚手続きサポート「トキハナOne」
もリリースし、それ以外の新たなサービスの準備も進めています。
ウェディング業界を少子化なのに成長産業にするため
結婚式場を探すお客様のニーズは本当に多様です。
・何から始めればいいかわからない
・結婚情報誌の情報だけではわからない
・自分でピックアップした式場の中からどの式場が良いかわからない
・自分でピックアップした式場よりも良い式場があるならそれを知りたい
・気になる式場の本当の費用や評判がわからない
・どうすれば圧の強い営業体験を回避できるかわからない
・もらった見積もりの妥当性がわからない
───など無限にでてきます。
もっと言うと、結婚式自体、実施するかどうか悩まれるカップルも少なくありません。
・予算がない
・ご祝儀の負担をかけたくない
・友だちごとに別々のパーティをしたい
・謎の慣習にしばられたくない
など、結婚式のアップデートが無いことで結婚式をしない方が良いと思われているのであれば、結婚式というプロダクト・文化自体のアップデートが必要ですし、それができれば少子化は避けられずとも、結婚式の実施者は増え、結婚式市場の成長を実現できるかもしれません。
世界を変えることは難しいかもしれない。でも自分に手が届くことならできるかもしれない。少子化で市場規模に懸念がある産業は多数あります。その中で産業構造を変革し、市場成長につなげた成功事例として、社会に新しい価値を示していきたいと思います。
〈株式会社リクシィ〉
「ネットとリアルで新しい価値を」を理念とし、「世界中のオールドビジネスをニュービジネスに」をビジョンに掲げ「ブライダル業界の構造改革・結婚式であふれた世界を創る」をミッションに2016年5月に設立。スマホで完結!式場選びのパーソナルサポート「トキハナ」を提供する結婚式相談カウンターDX事業、ブライダル企業向けコンサルティングサービスや人材紹介を提供する結婚式場サポート事業、トキハナで培った独自のLINE運用ノウハウで顧客獲得を支援するtoC営業DX事業を展開。
商号 : 株式会社リクシィ
代表者 : 代表取締役社長 安藤 正樹
所在地 : 〒105-0004 東京都港区新橋1-18-21 第一日比谷ビル 5階
設立 : 2016年5月
資本金 : 1億8,932万円(資本準備金含む)
URL : https://rexit.co.jp/
事業内容 :
トキハナOne https://one.tokihana.net/
リクシィブライダルコンサルティング https://consulting.rexit.co.jp/
リクシィキャリア https://career.rexit.co.jp/
リクシィLINEコンサルティング https://salesdx.rexit.co.jp/
<代表略歴>
2003年京都大学法学部卒業。
2001年より創業メンバーとして参画した株式会社ドリコムで、営業担当取締役として、新規事業、事業拡大、営業部門のマネジメント全般を担当し、東証マザーズ上場に貢献。
2009年株式会社エスクリに入社し、東証マザーズ上場を経験後、取締役事業本部長に就任し、東証一部指定替に貢献。
2016年5月、株式会社リクシィを創業。
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