【相談件数1.5倍!成約件数1.9倍!】顧客のビジネス成長を企業不動産サービスで支える 三菱地所リアルが「顧客視点」のソリューション提供で事業成長を実現するまで
三菱地所リアルエステートサービス株式会社は、企業不動産のプロフェッショナルとして、顧客の”企業不動産戦略”をサポートする三菱地所グループの総合不動産サービス事業会社です。
BtoB向けの不動産サービス事業市場は今後どうなる?旧態依然のマッチングサービスや御用聞き営業だけではいずれ市場から淘汰されるのでは?・・・そんな危機感から設立されたのが、三菱地所リアルエステートサービスマーケティング部。
顧客視点に立脚し、顧客満足度の高いサービスを提供していくことでLTVやロイヤリティが向上し、結果、当社事業の成長に繋がることを目指しましたが、言うは易く行うは難しです。
「まずは営業現場の実際の提案内容を確認してみようか。」
このストーリーでは、「顧客視点でのソリューション提供ができているか?」営業現場と供に試行錯誤を繰り返した結果、多くの顧客から支持を頂き、事業成長を実現するに至ったソリューション営業プロジェクトの裏側をマーケティング部中心設立メンバーの彦田がご紹介します。
三菱地所リアルエステートサービス マーケティング部 彦田大輔
以前は「法人の三菱」と言われていたけど、最近あまり実感ないな…社員がなんとなく感じていた危機感
当社の事業領域であるBtoB向けの不動産サービス市場は、コロナ禍においては一部で停滞が見られたものの、近年は非常に好調であり、市況感としてはピークを迎えているという見方が多い状況にあります。
とはいえ、近年の企業不動産市場におけるメインプレイヤーであり短期的な収益獲得の実現が可能な顧客セグメントは、所謂プロ事業者(デベロッパー、不動産会社、ファンド等のプロ投資家など)であり、当社でも収益の大半はプロ事業者からのものというのが実態としてありました。
プロ事業者と並ぶもう一つのメインセグメントである一般事業法人を対象とした企業不動産サービス事業市場は、顧客との中長期的な関係構築、信頼の醸成が、商談獲得の前提条件となることが多くる部分があり、短期収益獲得という視点では確かに効率のが悪い部分がもあります。しかし、少し古いデータにはなりますが、国土交通省の土地政策の中長期ビジョン中間報告記載内容によると、法人所有不動産の市場規模は約490兆円であり、プロ事業者を中心とした収益物件の市場規模約68兆円の約7倍(単純計算で差引き約422兆円)であり、企業不動産一般事業法人はサービス市場は決して魅力がないセグメント市場ではありません。
【出典】
https://www.mlit.go.jp/report/press/land02_hh_000035.html
私が入社した2000年代前半では当社が一般事業法人セグメント企業不動産市場における企業向け不動産サービス市場において、一定のポジションを確保しており、一部では「法人の三菱」とも言われていた時代がありました。しかし、近年では信託銀行や外資系の台頭や、自社の短期収益確保のためのプロ事業者への注力などもあってか、そのように言われることもあまりなくなったなというのが実感としてありました。実際に、コンペの勝率や商談の受注率も、当時より低下しており、社内でも漠然とした危機感があったと思います。
私はマーケティング部の設立2年目に企業向け一般事業法人セグメントに対して不動産サービスを提供している企業不動産部からマーケティング部に異動となりました。短期収益の実現が必要な営業現場から、ある程度中長期的な売上向上の仕組み構築や全社営業推進機能を担うポジションになったことを契機に、まずは、一般事業法人からの不動産企業不動産サービスの商談受注率向上を実現することを当面の目標として設定し、まずは営業現場での実際の提案内容を収集するところから本取組みをスタートしました。
顧客視点でのソリューション提供で企業不動産サービスの「戦略的パートナー」となることを目指して、「ソリューション開発ワーキンググループ」を立ち上げ
提案内容の収集を始めて最初に驚いたことは、収集できた提案書の数が想定より大幅に少なかったこと、提案内容が10年前とほとんど変わっていないということでした。
「そもそも商談機会が減少しているのではないか。提案内容も、競合が台頭してきている中で10年前と一緒だとしたらでは勝率が上がるはずもないな…。」と非常に危機感を覚えました。
企業不動産部で営業活動をしている中で肌で感じていたことではありましたが、顧客からパートナーとして見てもらえるまでには、とても時間と手間がかかります。御用聞き営業活動で獲得した表面的な不動産ニーズを自社の短期的収益獲得の観点で取捨選択したり、ヒアリング内容の表面だけをなぞった提案をするのではなく、その背後にある真の目的や課題を捉えた+αの提案(顧客視点に立った提案)を行うことで、初めて信頼の獲得、関係構築に繋がり、これを繰り返していくことで、初めて「戦略的パートナー」として見て頂けるようになります。仮に大型商談がコンペとなったとしても、「戦略的パートナー」になれていれば、提案内容が筋を外すことはなく、勝率は自ずと向上します。
しかし、これを実現するには多くの経験、ノウハウや時間が必要で非常に難しく、当時では、一部のトッププレイヤーにしかできないことと考えられていて、再現性のある型はありませんでした。
再現性のある型を、顧客企業の「戦略的パートナー」となるための営業手法「(ソリューション営業」営業)として確立することができればで、結果、商談機会の増加と勝率向上を実現することができると確信し、こうして立ち上げたのが「ソリューション開発ワーキンググループ」でした。
WG⇒室⇒課と1年ごとに組織を拡大、「標準化・高度化・ナレッジ化」の3点セットで、顧客視点でのソリューション提案が社内に浸透
ワーキンググループの立ち上げにあたっては、各事業部のトッププレイヤーに参画してもらうよう、社内調整を図りました。しかし、短期収益獲得を目的とする営業現場のトッププレイヤーの時間を割いてもらう必要があること、中長期的な収益獲得または他部門へのクロスセルで全社として収益獲得に繋がる仕組みという要素が大きく、ともすると自部門の事業効率が落ちるのではという懸念もあることから、全社一体での取り組みとすることは容易ではありませんでした。
1年をかけて何通りかのソリューションの型を作り上げ、営業ツールや提案ひな形として標準化しアウトプットを提供、試用した営業からのフィードバックの感触は良かった一方で、使いこなせる営業は一部に留まりました。感じられた好感触を実際の成果に繋げるため、翌年はワーキンググループからソリューション開発室へと正式な組織化を実施し、専任の担当者と各事業部からの兼務者という構成にしました。ソリューション開発室では、試験的に新規ソリューションの社内公募なども行い、室のメンバーと公募メンバーが協力して顧客視点でのソリューション開発を推進していくことで、社内の理解者、協力者も日に日に増えていきました。
また、ソリューション開発と並行して、私と中心メンバー2名の3名で提案書の作成代行・サポートの社内展開も本格的にスタートしました。提案書の作成にあたって、営業担当と事前ミーティングを実施し、ともすれば意図せず営業視点に偏っていた提案に、顧客視点に立ったソリューションを加えていく中で、提案内容の高度化を実現しました。提案を実施した際に顧客から好反応を得る機会が増加し、課題であった営業現場からの信頼や期待も徐々にではありますが獲得することができました。
翌年からは、ソリューション開発室に参加していたメンバーを課長に迎え、顧客へのソリューション推進を専任で行うソリューション推進課を立ち上げ、現在3年目になります。前年までの活動で、ソリューション営業の成果に確かな手応えを得たものの、営業現場への浸透が課題として残っていたため、ソリューション推進課において、「標準化、高度化された提案書やソリューション営業ツールの社内ポータルサイト構築によるナレッジ化」を企画・実行した結果、活用される頂く機会が劇的に増加、顧客視点でのソリューション提案が社内に浸透していきました。
「それはしない、できない、そこまでやる必要ない、お金にならない、そんな時間ない…」肌で感じた抵抗感、効率化・生産性など「社内常識」との乖離
先ほども申し上げましたが、取組みの初期には主に効率性や生産性などの観点などにおいて、社内から色々な声があがりました。実際に売上向上に繋がるのかと懐疑的な目が向けられることや、現場の目標達成に忙しいので必要以上の協力はできないというような意思表示もありました。
中長期収益の収益性を上げることが主目的の取組みとなっていたので、短期的な目線で見ればそういった側面があることも事実なのですが、やっている当事者としてはなかなか辛いし、理解が進まないことにもどかしさを感じました。
しかし、今思えば、当時は短期収益獲得目標の達成に向けて日々邁進している営業現場への寄り添いや、私自身が中長期の収益獲得や効率化・生産性向上に繋がるロジックを説明しきれていないなど、周囲に多大な協力を求める姿勢としては、不十分だったのではないかと思います。
「顧客からの反応が変わった!」、直近の相談件数は1.5倍、成約件数1.9倍に、定性・定量それぞれで成果を実感
転機となったのは、先ほども触れた提案書の作成代行・サポートや顧客視点に立った物件紹介資料の高度化(※)により、実際に短期収益獲得への貢献も実現できたことです。営業現場の最大の関心事はやはり短期の数字(売上、定量での評価)ですから、その部分で寄り添い、貢献できたことがが最もインパクトが大きかったと思います。
※物件紹介資料の高度化
従来、不動産仲介会社から提供される物件資料は物件概要を記載した1枚ものの資料+地図・写真程度の場合が多いが、一般事業法人が購入検討する際、社内討議や稟議を通すにあたっては不十分な内容であり、総務部門などの担当者が自ら補足資料を作成しているケースが多い。顧客視点に立てば、紹介時や詳細検討時に必要十分な情報が物件資料として提供されることが望ましいが、実際に提供できているケースは稀であったことから、検討場面に応じて高度化された物件資料を提供することを標準的に可能とする仕組みを構築する取組み。
短期収益獲得の実現と併せて、提案や物件紹介時における顧客からの反応も以前より良好なものになり、顧客から高評価を得られることも増え、信頼の醸成や中長期での関係構築に繋がる可能性を営業現場が大いに感じられるようになったことも、定性的な成果として挙げられます。
昨年までは本社におけるソリューション推進という側面が大きかったのですが、支店においてもソリューション営業を推進していくことを目的に、全支店を対象として、四半期毎のエリアマーケットレポートの提供を開始しました。今までは支店圏での営業ツールが少なかったこともあって、支店担当者からの評判は上々です。常時、顧客にお役立ち情報を提供することが可能となったことで、顧客からの好反応も増え、手応えを感じているようです。
また、オフィス仲介事業のソリューション営業推進として、既存のオフィスマーケットレポート(空室率レポート)を大幅にアップデートしました。従来は都心7区の空室率や募集賃料単価などをまとめた比較的簡易なものでしたが、アップデート版では、従来の内容に加えて、オフィス市況に関連する各種データを新たに収集し、BIツールを用いて統合・抽出・分析を実施。分析結果の可視化や企業へのアンケート実施結果から導かれたオフィス市況への示唆を加えたアウトプットとするなど、より顧客視点で興味を持って頂けるような構成に変更しました。
これらの取組みにおける営業現場からのフィードバックにおいて、顧客から感心や感謝の声があったことを聞くことも増えてきました。相談件数昨対比1.5倍、成約件数も昨対比1.9倍と目に見える成果もあります。とはいえ、まだまだ伸びしろがあり、もっと成果を出せると考えているので、今後も全力で取り組んでいきたいと思っています。
「企業不動産なら三菱地所リアル」への挑戦 顧客のビジネス成長を企業不動産サービスで支える「戦略的パートナー」へ
一部私見も入りますが、従来の不動産仲介サービスは、「マッチングのスピード」「売買価格の妥当性」「クロージングの確かさ」に重点を置いてきたと思います。もちろんこの3点は非常に重要であり、ここで価値が提供できない仲介会社に市場での競争力はありません。しかし、これは仲介会社として最低限必要な事項であり、これだけでは企業不動産の「戦略的パートナー」は務まらないと考えています。
当社のビジョンの一つに「私たちは信頼されるプロフェッショナルチームとして、お客さまの期待を超える不動産サービスを提供します。」というものがあります。「お客さまの期待を超える不動産サービスとは何か?」、それは顧客視点に立ち、顧客の真の目的の達成や課題解決に貢献することで、「顧客のビジネス成長を支える企業不動産サービスの提供」ではないかと考え、企業課題をCRE(企業不動産)関連施策で解消することで企業価値向上を実現する、CREマネジメント推進ソリューションを開発、提供しています。
CRE関連施策がP/L・B/S・C/Fに与えるインパクトは大きく、施策の「適切な選択と確実な実行」を行う必要があります。老朽化物件があった場合、仲介会社としては正直なところ短期収益獲得の実現のために売却を提案したくはなりますが、顧客にとって必ずしも売却が最有効な選択肢ではない場合も多くありますので、そこはグッと堪えて、どの施策が顧客の企業価値向上に繋がるかをしっかり検証し、顧客視点に立った提案をすることこそが、「戦略的パートナー」の役割と考えています。(売却させたいという思いが強く出ている提案は、顧客にも見抜かれていると思っています)。
今年、少しうれしいことがありました。当社が4月に実施した認知度・ブランドイメージ調査において、当社及び競合各社の既存顧客が保持しているブランドイメージの設問の「ビジネスの成長を支える提案がある」という項目において、当社が最も高いスコアを獲得することができました。三菱ブランドの信頼と実績によるところも多分にあることはわかってはいますが、今まで取り組んできたことが、一定程度顧客に響いているのではないかと思います。
また、社内においても表彰制度「Value Bridge Award」で、今年度、ソリューション営業の取組みで優秀賞を受賞しました。この取組みが営業現場を含む全社でも認められる結果となったことは素直に嬉しかったですし、全社が一体となって取り組んでいると感じました。
今年度、当社マーケティング部においては、企業不動産サービスにおける顧客のビジネス成長への貢献機会の増加と、マーケティング活動において顧客のビジネス成長に役立つ情報を積極的に発信することにより、「企業不動産なら三菱地所リアル」という認知・想起を獲得することで、当社の事業成長を実現していくことを活動方針として定めました。
今後も企業不動産に係る「戦略的パートナー」として、従来の不動産仲介サービスの提供に留まらない「顧客視点に立った企業不動産サービス」を提供し続けたいと思っています。
【プロフィール】
彦田 大輔(ひこた・だいすけ)
三菱地所リアルエステートサービス株式会社
マーケティング部次長
2005年入社。不良債権処理案件、一般事業法人営業/コンサルティング提供、プロ投資家営業など、一通りの不動産売買仲介実務を15年経験した後、2020年4月にマーケティング部へ着任。マーケティング部にて、ソリューション開発・営業サポート機能の立ち上げ、マーケティング戦略の立案・構築、デジタルマーケティングの推進、顧客調査や不動産マーケットのリサーチ・分析業務などを主管。
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