【第15話】『ハッピーエンドを探して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「出来損ない」
「ダメな人間」
だと思った。
こんな奴は生きていても意味が無いと思った。
それでも、周りに認めてもらうために必死だった。
「強くならなきゃ…」
そう思って、僕の弱っちい限界をぶち壊すためにこの旅に出た。
でも僕はまだ、当たり前のことが出来ていない。
みんなが働いている間に、僕はこうして知らぬ土地を独り歩いている。
本来働いているべき時に、僕は旅をしている。
そういえば、旅をしようと思った時に決めたんだった。
「ずっと出来なかったことをやろう!」と。
仕事をしていたら、旅には出られていない。
適応障害と診断されていなければ、会社は休めていない。
婚約破棄にならなければ、独りの自由な時間は出来ていない。
うつ病にならなければ、旅をしようとも思わなかっただろう。
すべてを失わなければ、自然を見て美しいと感じ、
人の優しさに触れて、ここまで感激することもなかっただろう。
みんながやっている当たり前のことが出来ないのは事実だ。
でも、みんなが持っていない時間を僕は持っている。
みんなが出来ない旅をしている。
みんなが見たことのない景色を見て、
みんなが出逢ったことのない人に出逢い、
みんなが感じたことのない優しさに触れ、
みんなが考えもしないことをこうして考えている。
これはすべて、今まで辛いと思ってきたことがあったからこそだ。
婚約破棄だって、うつ病だって誰もが経験出来ることじゃない。
「僕は、僕にしか出来ないことをやっているじゃないか!」
そう思った。
そりゃ、辛いよ…。
婚約破棄だって、うつ病だって、経験したくなかったよ…。
でもさ、これらが無かったら、
経験出来なかったこと、
感じることが出来なかったことが、
この短期間で数えきれないほどあるんだよ。
僕が、今の僕じゃなきゃ出来なかったことがたくさんあるんだよ。
そんできっと、今の僕じゃなきゃ出来ないことだってあるんだ。
そう思えた。
「休職」
「婚約破棄」
「うつ病」
こいつらはすべて、僕の汚点でしかなかった。
「あってはならないこと」
「恥ずかしいこと」
だと思っていた。
でも今は…
こいつらのおかげで
今まで知らなかった経験を、
今まで感じたことのなかった感情を、
今まで気が付かなかった幸せを…
感じることが出来ている。
僕が存在する意味はまだ分からない。
でも、
僕が婚約破棄になり、うつ病になったのは、
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