一本の映画を撮るように、人生をプロデュースする話。(第2章:ヤツと剣道 編)
足の速さも互角。
小4の時、小体連に学校代表で出場しているオレにとって、
受け入れがたい事実だった。
転校生が、転校先の学校で、それなりの居場所を見つけるには、
”秀でた特技”があるといい。
転校生が多い学校にいた経験からオレはそれを学んでいた。
「ヤバイ。」
このままだと、居場所どころか、ヤツの支配下に組み込まれてしまう。
全然やったことなかった、”ソフトボール”がこっちでは流行っていて、
”球技ヘタクソ”のレッテルを貼られそうになっている。
意地でも何かを”死守”しなければ、オレの将来は真っ暗だ。
そんな時、
武雄市の剣道大会が近く開催されることを知った。
ヤツは、去年の大会でも好成績を獲得していたらしい。
”ここだ!”
「この大会で活躍して、一目置かれる存在になってやる。」
オレはここの中で、密かに、そして固く誓った。
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ヤツを”ぎゃふん”と言わせるには、
ヤツ以上の結果を出さなければならない。
オレは、
1回戦、2回戦、3回戦、4回戦・・・と勝ち進む。
ヤツも同じく、
1回戦、2回戦、3回戦、4回戦・・・と勝ち進む。
同門対決。
気付けば、準決勝に二人はコマを進めていた。
勝った方は、決勝に進み、負けたら3位確定。
お互い、相手の得意技は知っている。
小手先の技術は通用しない。
”オレの剣道” VS ””ヤツの剣道” という感じだった。
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「はじめ!!!」
合図がかかると同時に、互いが気を高め放つ”咆哮(ほうこう)”。
間合いを詰める。
コテでいくか?
メンでくるのか??
それとも、コテメンか?
一挙手一投足に緊張が走る。
お互い、竹刀で相手の竹刀を牽制しつつも、
いつでも、”技”を放てる態勢。
かつぎメンを打ってきた!!
タイミングをずらして打突する、ヤツの得意技だ。
危なかった。
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