第9話 コップの水はどれくらい入っている?【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

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それは、自分の世界がひっくり返るような感覚だった。

頭のなかで、なにかが繋がろうとしている。




まほ
もしかしてお母さんは、
自分のことが好き…じゃないの?



電話の向こうのお母さんは、沈黙していた。携帯のノイズ音が響く。

そしてお母さんは少し言葉をつまらせながら、答えた。




お母さん『 う…ん、そうね...。お母さんは、自分ことは...あんまり好きじゃないかな。 』




その瞬間、急に視点がぐるりと回転した。

自分の中の絡まっていた糸が、するするとほどけていく。




おかあさんも、自分のことが好きじゃない?私と一緒?




ほどけた糸が、つぎつぎと繋がっていった。




私には悩みがあった。

それは、将来、子供を育てられないんじゃないか、ということ。

それは、自分と似た女の子が生まれたら絶対怒って育ててしまうからだ。




自分のことが嫌いな私が、もし似たような性格の我が子を持ったら、

”私みたいになってほしくない”と、叱ってしまう。




それは、お母さんの”予想外のその答え”と一緒だった。




お母さんは、私を愛してないわけじゃなかった?




すると、目の前に大きな夕日が広がった。

本当におおきなおおきな、真っ赤な夕日。



それは小さいころ、夕日が大好きなお母さんと見た景色だった。



保育園の頃、仕事を始めたばかりのお母さんが送り迎えをしてくれていた。

その帰り道、アスファルトの坂道に大きな夕日が沈むんだ。



おかあさん『 ほら!まほちゃんなほちゃん!夕日だよ〜!おっきいね〜! 』



まほ
ほんとだ〜!おっきいー!キレイ〜〜〜!



そう言うと、お母さんが大きな声で歌をうたう。

私たちも真似して歌う。大きな口を開けてうたう。



助手席から、オレンジ色に染まったお母さんの横顔を見ていた。

空も団地も坂道も、車もわたしたちも、みんなオレンジ色だった。




お母さんは嬉しそうに笑う。

夕日とお母さんとのその時間が、大好きだった。






中学生になった時、私はもう夕日が嫌いだった。

自分が嫌いで自信がなかった私は、世界がキレイに見えなくなっていた。



その日は期末テストが近いのに、自分の目標まで勉強できなかったんだ。

もう夕方、一日が終わってしまう。

自分はなんてダメなんだろ、また自分が嫌になっていた。



仕事から帰ってきたお母さんに、急いで駆けよる。



まほ
お母さん!おかあさん!今日ね、全然勉強できなかったの...!全然ダメだったの!



叱って欲しかった。何やってるのっ!って。叱り飛ばして欲しかった。

でもお母さんは、玄関先で私を抱きしめてこう言った。



おかあさん「 そんな日もあるよ〜。大丈夫、だいじょうぶ! 」



お母さんのそのことばに、全身の力がゆっくりと抜けていく。

全部許された気がした。”そのままでいいよ”と言われたような安心感だった。

幸せで満たされたいく。



抱きしめられたお母さんの肩越しから、夕日が沈んでいくのが見えた。






高校生になると、お母さんと私は喧嘩ばかりだった。

お母さんは仕事で忙しくなり、私は自分のことでいっぱいだった。



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