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みんながストーリーを持っている

小説(25)
吉村 誠
7 min read

フェイスターン⑤

355
7 min read
  見られた。鬼の角。見られた。  わたしはうわごとのように呟きながらトイレに駆け込む。  どうしよう。ばれた。わたしが鬼だってばれてしまった。阿部に。一番好きな人に。もうおしまいだ。この恋も、...
吉村 誠
4 min read

フェイスターン ③

334
4 min read
 そのことを話すと、お母さんはとても喜んでくれた。ろくに友達もいなかったあんたに、親友と好きな人が一度に現れるなんて、と。  でもわたしは手放しで喜ぶことはできなかった。なぜってもちろんこの頭の...
吉村 誠
6 min read

フェイスターン ④

341
6 min read
  それからしばらく経った日の朝、お母さんがダイニングテーブルに二枚の紙を置いた。「これ、阿部くんと行ってきたら?」とお母さんが言った。プロレスのチケットだった。「お父さんがね、今やってるタッグ...
高橋 祐貴
1 min read

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」①

231
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人は緊張した状態に陥ると心臓の鼓動が速くなる。直接耳で音を感知することはないけれど、ドクンドクンという胸を打つ鼓動が聞こえる。危険や恐怖が眼前に迫った時、心臓は静かになる。全身に流れていた血液は...
高橋 祐貴
1 min read

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑪

188
1 min read
赤いミニトマトが一つ。その赤色はとても鮮やかで周囲の緑の中で一段と映えていた。サーモンの赤みなど赤ではないと主張するかのように、一つ、そのミニトマトは置かれていた。詩織はシャワーから上がるとリビ...
Kujira Staff
4 min read

容疑者Xの献身を見て (ネタバレあり)

294
4 min read
「容疑者Xの献身」のストーリー何というやるせない物語なんだろうというのが第一の感想でした。ストーリーは、人生に絶望して自殺しようとしていた高校教師が、住んでいるアパートの隣に越してきた母子に愛を...
高橋 祐貴
2 min read

【短編小説】ある夏の昼下がり。

272
2 min read
私は今、少女を見ている。金髪のロングヘアをなびかせ、水色のワンピースを着ている。地中海の沿岸で育ったような小麦色の肌と青い瞳。その少女は自宅だが、ペンションだか知らないが、窓際に立って外を眺めて...
高橋 祐貴
1 min read

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑬

183
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そんな出来事を振り返りながら、今さゆりはベットに入り、手を伸ばそうとしている。少し弾みをつけてから思い切り手を、宙に浮く白玉に伸ばした。すると白玉はおとなしくさゆりの手に捕まり、下へとその位置を...
高橋 祐貴
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「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」②

211
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次から次へと全身に汗が吹き出てくる。これでは少し止まって体を拭いても仕方がない。「あと半分くらいかな。家に帰ったら服脱いで、シャワーを浴びよう。頭からザバッと。それからパジャマのズボンとキャミソ...
高橋 祐貴
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「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑳

165
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しばらく景色に目を奪われていた後、前を向くと父が窓から手を出し、サインを送っているのが見えた。もうここは峠だ。おそらく先ほど父が言った通り、先にサービスエリアで待っていろってことだろう。運転席の...
高橋 祐貴
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「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」③

225
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さゆりの学校は私立の中高一貫校で容姿に関する規制は緩い。むしろ、学業が良ければ特に何も注意されたりすることはなかった。さゆりがいつも仲良くしている3人女友達のうち2人は髪を染めていた。1人金髪シ...
高橋 祐貴
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「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」④

197
1 min read
今日は金曜日。部活の朝練から帰ってくる途中、子供の頃のユートピアを目にした時、かつての自由が懐かしかった。あの店に入れば自由が手に入る。たぶん髪の毛を染めることもできるだろう。結局、さゆりは駄菓...