陸の孤島の小さなクレープ屋さんの物語
すると、これ以上は安くならないだろうと、自分で勝手に思い込んでいた原価が、いとも簡単に下がったのである。
これで僕は仕入原価を大きく下げる事に成功したのである。
仕入原価が下がれば「利益が増える」→「利益が増えるからお客様へのサービスが向上する」という正のスパイラルを生み、結果として「お客のために」なるのだ。
*ここで再確認しておかなきゃいけない大事な事がある。
業者さんは大切にすること、関係性は良好に!
当然の事だが業者さんがいなければお店は存続できない、業者さんが食材や備品を欲しい時に欲しいタイミングで提供してくれるおかげでお店の運営がスムーズにできるのだ。
業者さんはお店を一緒に運営していく大切な「パートナー」なのだ。
ゆえに、相見積もりを取って業者さん同士を競争させるのは「2~3年に1度、全品目ではなく半分の品目の仕入れ価格を見直す程度」にしておかないと、業者さんから嫌われてしまい、最悪の場合取引を打ち切られたり、良い情報も貰えなくなってしまう。業者さんだって人間なのだから当然の事である。
値下げ交渉をすることは、業者さんにとって必ずしも悪いことではない。
お店も仕入価格が下がれば、利益が増えるからお客様に良いサービスが提供できる、良いサービスが提供できるからお客が増える、お客が増えるから業者さんから仕入れる量も金額も増える。
こんな具合に、「お店もお客も業者さんも喜ぶ、三方良しの構図」が出来上がる場合もあるのだ。
■人件費について
この頃にはお袋と僕以外に3人いたアルバイトの内2人が高校卒業で県外へ就職等の理由で退職し、新規の雇用もしなかったので、お袋と僕とアルバイト1人になっていたので、人件費の負担は軽くなっていた。
■オペレーション改革
僕は当初、僕を含めお店に居る従業員の人数で効率的に運営するオペレーションを組んでいた。
しかしそれでは欠員が出た時に、どこかのポジションに負担がかかる事になる。
そこで従業員が1人でもある程度の売上までは対処できる様に、食材の配置から備品や物の配置まで全て見直しオペレーションを作り変えた。
これで提供時間は早くなり、作業効率は大幅に向上したのだった。
■NO2の育成
次に僕が取り組んだのは、「自分の分身」を作る事だった。
僕は現場を離れる事を決意して、アルバイトを正社員として雇用して、ほとんどの権限を与える店長として育成を始めたのである。
●信じる事の大切さ
井崎先生に出会う前の僕は「自分の分身」を作りたくても、「一番仕事ができるのは俺だ」とか「これは俺にしかできない」とか「他人に任せるとちゃんとできるか心配」などと思ってしまい、ずっと現場に入り続けていた。
経営者が現場に入ったらその時点で「経営者」ではなくなる。ただの「ワーカー」だ。
本来、経営者の役割は「VISION」を実現するための「戦略」を立て、それを実現するための「経営戦略」の構築であり、いつまでも現場で汗を流して働くことではないのだ。(但し、成長の段階によっては現場で働くことも必要)
それから僕は「最低限のルール」だけ作って、店長に全てを任せたのだ。
大切なのは「相手を信じる事」
お袋を信じ、店長を信じ、全てを任せる。
心配はいらない。人は信頼されて任されると必ず成長するのだ。
もう一つアドバイスしておくと、「信じるだけ」ではなかなか相手に伝わらない、「信じていることを態度で示すこと」が大切だ。これができると相手に伝わる。
これで僕は「NO2の育成」に成功した、任されたスタッフはイキイキと仕事ができるし、イキイキしているからお店の雰囲気も良くなる。結果として僕が現場で働いていた時よりも売上も向上し、素敵なお店になった。
■「量の論理」から「数の論理」へ
今はクレープ屋さんに限らず、多くの業界で競争が発生している。
うちのお店で言うと、競合は「クレープ屋」だけではなく、コンビニを含め「おやつ」やスイーツを扱っているお店は全て競合になる。
ご存知の通り今ではいたるところにコンビニがあり、1店舗当たりの売上高を向上させるのは至難の業であり、マーケットの大きさにも上限があるわけだから、どんなに頑張ろうとも1店舗当たりの売上高には限界があるのだ。。
この様に1店舗当たりの売上高を増やそうとすることを「量の論理」という。
これは先にも説明した通り、今の時代では限界がある。
次に、1店舗当たりの売上高はそこそこだが、そんなお店を複数店舗出店することを「数の論理」という。
これがまさにコンビニやマクドナルドや吉野家などのチェーン店の戦略なのだ。
例えば、月商200万円を売り上げるお店を1店舗持っていたとすると、既に200万円を売り上げる店を作れるだけの実力があなたにはあるのだから、もう1店舗200万売り上げるお店を作れば売上は2倍である。
これを言うとほとんどの人が、
と言うと思う。
ではこう考えたらどうだろうか?
月商200万のお店は作らなくていい、その代り月商100万のお店を2店舗作りましょう。もしくは月商50万円のお店を4店舗作る。と考えたらどうだろう?
あなたが200万のお店を作れるのなら半分の100万はそれ程難しくないはずだし、ましてやその4分の1の50万なら眠っていても出来るのではないだろうか?(もちろんその売上高でも経営が成り立つ経営構図は必要だが)
これが「数の論理」だ。
■2号店の出店へ
井崎先生の元で学び、僕は2号店の出店を決意した。
だから先に書いたように「NO2の育成」に入ったのだ。
ティファニーを安心して任せられる環境を作り、僕は2号店となる「スイーツ工房 Every(エブリィ)」を宮崎市内に出店した。
この話は長くなるのでまたの機会に(^^;
■クレープフランチャイズ展開
2号店も無事に立ち上がり、僕が現場に入らなくてもしっかりと運営できる「仕組み」ができた。
「仕組み」さえ作れば後は数を増やすだけで良いのである。
こうして2012年にクレープティファニーを本店とするクレープ店のフランチャイズ事業がスタートしたのだ。
ありがたいことにゆっくりとしたペースであるものの加盟店が増えていき、
2017年には念願の東京進出を果たし、東京フランチャイズ1号店が誕生した。
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